| design | 2012年5月7日(月)

制約から拡がる可能性。

text_Ken Ono

(つづき)

とはいえ、自由な気持ちを維持しつつも何かを伝えるべく様々な制作物にはひとつの制約を設けた。

それは小さいものから大きいものまでほぼすべてをA4サイズの紙からつくるというものだ。家庭に広く普及したインクジェットプリンタとA4用紙を使うことでオランダ展という体験がより身近なものになればと考えた。

A4を何枚か並べて写真を大きく見せるときもあえてA4を使っていることがわかるように白い枠線を残している。本来はいかにこの継ぎ目をなくして大きなイメージとするか知恵を絞るはずだが、むしろ何枚組み合わせるかで簡便にサイズ調整できることに主眼を置いている。

また、一定の間隔で現れる白い枠線には、写真をあたかも窓越しに見る風景のごとく感じさせてくれる効果もあるように思う。

このA4の仕組みで写真を大きくしたものをフォトフレームならぬ「プチフレーム」とし、それひとつに対して9枚貼り込み、その周囲をオランダのデザイン集団ドローグ・デザインによる「Do frame tape」で額装した。

なにもないところにひとたびこのテープを貼ると、まるで荘厳な額縁が施された絵画作品のように見えてくるのだから驚きである。まさにオランダ展にふさわしいアイテムといえる。

プチフレームを両面に施し、数枚重ねて本のように仕上げたものをビッグな「プチえほん」、それをA4の半分にまで縮小したものを手元用のプチえほんブックとして様々展開していった。プチえほんではこどもが絵本のなかに入っていけるようなそんな大きさをイメージしている。

そして、たくさんの写真の目玉となるものに「フォトウォール」を用意した。A4を2枚上下でつなぎ、折ることで4つの面をつくり、なかに紙袋を入れて1個の四角い立体ができる。4つの面に写真を印刷し、それをおよそ100個つくった。

軽くて積み重ねることができるので上へと横へとブロックのごとく並べられる。ウォールには顔を出せたり、こどもであれば通れるほどの開口をつくった。遠くから眺めることも、また写真をより身近に感じることもできるように。

とにもかくにもプチマルクトではオランダをFeelしてもらえたらと雑貨の展示販売も写真の制作表現も細かな説明は抜きにした。話したいことはいっぱいあるけれど、だって「Feel」だからねと。

ただ、制約を設けることで工夫の可能性は拡がったように思う。Feelが表のテーマであるならば根底にあるものは身近に感じてもらうための工夫と挑戦である。

プチモダンのオランダ展は、小野千鶴というひとりの人間から見た非常に限られた視点のオランダではあるが、想像以上に多くの人に来場いただきまたFeelしていただき、倉敷在住でありながら倉敷の持つ人を惹きつける街のチカラにただただ驚くばかりであった。

| exhibition | 2012年4月4日(水)

プチモダンのオランダ展

text_Ken Ono

2011年7月、うだるような暑さになる前の夏、プチモダンはじめてとなるオランダ展をここ倉敷で開催した。

「プチマルクト」なんて銘打って、しかもいきなりコラボなんかしたりしてどうなるものやらと雲をつかむようなはじまりであった。

場所は倉敷美観地区にある倉敷物語館と決めた。美観地区は文化の交わるところ、人の交わるところとして倉敷のその最たる場ではないだろうか。

倉敷に住むぼくたちが異国の地オランダに興味を持ち、その旅から得た体験を発信するのである。倉敷に興味を持ち、旅で訪れた人が偶然にもオランダと出会う。旅が旅へとつながっていく、そんな感覚が旅のおもしろさのひとつではないだろうか。

場所が決まり、では何を通じてオランダを伝えていくか、体験を伝えていくか。それはこれまでの旅で撮りためたたくさんの写真と、少しずつ集めた雑貨ということになる。特別な名物を持ち合わせているわけでもない。特別ではない今あるすべてで何かを「感じて」もらえたらうれしい。

だからというわけでもないが自然とテーマは「Feel」ということに決まっていった。裏を返せば、何の決め事もなく自由に進めていきたいというだけで、いまだ掴みどころのない雲がフワフワといった感じが続いていた。

(つづく)