| music | 2005年9月29日(木)

いつまでも冒険していたい。

text_Ken Ono

アップルコンピュータの音楽配信、iTunes Music Store がスタートした。中身の音楽よりも音楽の買い方のほうが話題となった。買う方法が中身よりエキサイティングだなんてまだまだ隠れた革命が音楽にも音楽以外にもありそうである。

CDジャケットのもつイメージと音楽が組み合わさってはじめて完成品と思っていたがそれも超越しそうな気持ちにさせてくれる。モノとして買いたいCDはきっと買うし、中身だけ欲しいものはナカミだけ買う。発信する側も受信する側もいろんな方法を手に入れてしまった。

デジタル時代は買い方が直感的。だけど中身もわからずにジャケ買いするような冒険性は乏しくなったかもしれない。ジャケ買いだなんて、この新時代でもそんな冒険野郎でいられたらと思う。

でも買い方よりも大切なのはやはり中身のほうで、これをどう残すかが問題である。手に入れたとしてもカタチがない。データだからある日突然消えてしまうこともある。身軽で場所はとらないけど困りものだ。

そんな事態に陥っても心配ないようにバックアップをとる必要がある。それは、買い方がエキサイティングだとか、新時代のジャケ買いだとか、とても冒険野郎には似つかわしくない地味ぃな作業である。この調子だと冒険野郎になれる日はずいぶん遠い。

| running | 2005年9月8日(木)

折り返し地点があるからイイ。

text_Ken Ono

9月初めの日曜日、蒜山高原マラソンに参加した。ハーフもあるが10キロの部で。33歳の冬にはホノルルマラソン完走をと心に誓い、「ホノルルの会」所属とした。所属メンバーは僕ただひとり。ひとりでユニット結成だなんてまるでコーネリアスみたいだ。

岡山北部、鳥取にほど近いところ蒜山高原で行われるこのマラソン大会ももう第24回を数える。過去に一度参加、一度出発前リタイアと今回で3回目のトライ。いずれも地域をあげて取り組もうという姿勢が伝わり、アットホームな感じがとても好印象でまた来たくなる。

過去に一度10キロを完走したときは次の日からしばらく、それはもうしばらく、体が使い物にならなくなり困った。体のなかにいつも熱がこもった感じがあり関節という関節が痛くてしばらく運動どころではなかった。

しかし、今年の僕は違う。一年前から通い始めた整体でカラダをデザインし、カラダにとって自然な走りを心掛けるようにしている。スピードはまだまだ出ないけど走りの質が確実に変化した。おかげで完走後の体の痛みも一時的ですこぶる良好だ。

走りの質が向上したとはいえ走ってる最中しんどいもんはしんどい。そんなとき思った。折り返し地点があるってイイ。妙に達成感あるし。人とひととが顔あわせるし。

振り返ることのできない人生にも折り返し地点みたいなものがあるといいかも。ゼロから始めてゼロに戻るのも悪くない。なにも無いゼロとあらゆるプロセスを経たゼロは違うもんね。数字には表れない努力っていっぱいあるけど、どれも無意味なものなんてない。

今後の課題は、持続力。ラストスパートをかけようとした残り3キロ、徐々に失速。ゴール間近ではもうスパートしてなかった。ラストスパート3キロから1.5キロの男と呼んでください。

| international | 2005年8月27日(土)

不自然が普通です。

text_家族 de 海外赴任

シンガポールの楽しみ方はいろいろあると思います。ショッピングや動物園、植物園と様々ですが、ジョギングなんかはどうでしょう。ジョギングがしんどければ散歩もいいですよ。

シンガポーリアンは健康志向が強く、走っている人が本当に多い。健康器具ショップも異常にあります。日本食も健康食と考えられていて非常に人気があります。てんぷらもとんかつも健康食だと間違った認識をしていますが....。

先日、気になって平均寿命を調べると80歳ぐらいで、アジアでは日本に次ぐ2位。全体でも8位。近隣が低いなかで立派ですよね。

走ったり歩いたりしていると、日本から想像した以上の素晴らしい町並みが目に入ります。時には建築基準の違いから、日本人からは違法としか思えない建物にも出くわします。

なんせ、ここは英国基準。地震がないと思い込んでいるので、不自然が普通です。

| music | 2005年8月3日(水)

東京ステイ、音楽と一緒に。

text_Ken Ono

先日、東京にショートステイした。東京に行くたびに感じることがある。それは、たくさんの人が、それも多種多様なスタイルの人が同時に存在しているということ。存在が成立しているということ。

モードからヒップホップ、アウトドアからインドア、トラディッショナルからクールビズまで実にさまざま。たくさんの人がいるからこそこの異種格闘技のような様相が成り立つのだろう。不思議です。

岡山駅に戻ると岡山人の雰囲気ってものが伝わってくる。金太郎飴のごとくどの人からも。決して似てるわけじゃないけどにじみ出てる。不思議です。

さて、東京ステイで大いに役立ったのがアップルコンピュータのノートパソコンと付属の音楽ソフト iTunes 。

ノートパソコンといえどそんな軽々しいものでもなく一緒に持っていくとなるとそれなりの勇気がいる。あればなにかと便利、なければないでなんとかなるかという感じ。

しかし iTunes のおかげでその存在感が一気に飛躍した。録りためた音楽を流すことで慣れないホテルの一室がホッと安心できる空間へと変わった。音楽がいつも聴いている環境まで連れてきてくれてるかのようだ。懐かしい音楽を聴くとその時の思い出まで蘇ることがある。音楽にはそんなチカラがある。

ないよりいいかな程度に思っていたノートパソコンのスピーカでこんなにも満足できるとは思ってもみなかった。しまいには音質の悪さがアジなんだよねって思うようにも。不思議です。

こりゃノートパソコンは手放せませんな。これからは、米袋かつぐ気持ちで肌身離さず行動をともにすることにします。

| life | 2005年6月30日(木)

曇り空の楽しみ方を教えてもらう。

text_Ken Ono

小高い山の上に一人暮らしをする九十ン歳の祖父を訪ねた。久々の雨らしい雨に小走りで家に向かうと祖父が外のベンチで腰をかけていた。

今年は雨の降らない梅雨として水不足への不安が日に日に増している。「晴れの国」のキャッチフレーズでお馴染みの岡山だけに雨と縁遠くなってるのかと思いきや西日本一帯に言えることらしい。近隣の香川ではすでに深刻な状況だとか。暑くない夏なんて夏じゃない、雨の降らない梅雨なんて梅雨じゃない。ということで祈っちゃいます、雨よウェルカム!!

さて、祖父はこの久々の雨のなか外で何をしてるのかと気になって隣に座ってみた。するとおもむろに遠くに見える山を指差し話し出した。「向こうから手前に重なるように並んどる山を見てみぃ。奥の山から霞んできて今に見えんようなるぞ。」確かに向こうにある山は見えてたし空も晴れていた。

しばらくすると奥の山から霞がかってきてしまいには見えなくなった。その日は降ったり止んだりのお天気でこちらが降れば向こうが晴れる、こちらが晴れれば向こうが降るといった感じで、その繰り返し変わる様子をしばらく眺めていた。

見事山が見えなくなると「ホレ隠れたぞぇ、見てみぃ。フォッフォッフォッ。」ってたまに大笑いすること2時間。時が経つのも忘れて曇り空を追いかけた。

よくもまぁ2時間もと後で思ったが、空を眺めることがこんなにも刺激的だということを知らなかった。いや忘れていた。山の霞む様子、何層もフィルタをかけて視界から消えていく。雨雲が濃くなっていく様子、グレーのグラデーションが美しい。

何を見て何を感じるか、自然の楽しみ方を九十ン歳は知ってるんですね。年の功かぁ、サスガ、おみそれいたしました。

| international | 2005年5月24日(火)

グレートなスモール。

text_家族 de 海外赴任

シンガポールは娯楽の少ないスモールアイランド。
2、3日なら十分楽しめます。

ちなみに、5月27日〜7月24日までは
「グレートシンガポールセール」
という国を挙げてのセール期間があります。
国を挙げてというのがシンガポールらしく
まさにショッピングカントリー!!

来年にはカジノが二カ所できる予定で
製造業をあきらめて、金融業を目指しています。
資源の全くない国がここまで発展するとは
頭のいい国だとつくづく感心します。

| life | 2005年4月21日(木)

無駄なようでムダがない。

text_Ken Ono

寒いからという理由だけで、人類史上最大にして最高のエコカーと呼び声高い「自転車」の愛用から遠のいて久しい。体調が優れず、いまいちノらなかった夜型ライフから朝型ライフへとシフトしようと心に決めたのを機に今一度、アイラブ自転車に身を任せることにした。
確かに遅い、車より。目的地への到着も時間がかかる、車より。夜の風は冷たい、向かい風を正面から受け止めひたすら進むと足がパンパン、日焼けに縁遠かった僕もほんのり小麦色の肌に、車より。
車と比べちゃうと不便な点も枚挙にいとまが無い。言い替えるとすべては無駄なことのように思えてくる。自転車に乗ってるから無駄が多いとなると「自転車」自体が無駄な存在になってしまう。

しかし、一見無駄なようなことでも実はムダのないことに気付く。スピードが遅いかわりに今まで見えなかった景色が見えてくる。それが海や山のような素晴らしい景色でなくてもじゅうぶん。気になるものは立ち止まって眺める勇気が持てる。
思ったより時間がかかり、筋肉疲労だけが残る。それも体を使って代わりに脳を動かしていると思えばナットク。脳は頭の中で考えるだけでなく手足を動かして回転させることができるという話も。ってことはハァハァ言うぐらい自転車をこいでいる僕はびっくりするほど脳を動かしてるっていうことかしら。実際走り終わった後、妙に頭がスッキリしていることがある。その後のヤル気はお疲れとのバランスで負けることもあるけど。
昼の暑さと夜の寒さを感じたいし、マウスより重いものを持ったことがないと言っても過言ではない日常だから運動になるし、モニタは関係ないだろうが青白くなってくる肌に嫌気が差していた。
一年のうち必ずやってくる真夏と真冬を前にして同じことは言ってられないかもしれない。酷なことのほうが多い自転車、車もしっかり使うけど気持ちから始めようプチエコスタイルって感じです。

| international | 2005年2月11日(金)

シンガポールタイム。

text_家族 de 海外赴任

シンガポールという国は面白いですよ。何が面白いって、今まで無かったことをたくさん体感できます。例えば、英語。

あちらではシングリッシュという特有の英語を使います。代表的なのは、語尾にいろいろな言葉が付く。"OK!!"と言うときに、"OKラッ!!"と「ラ」が付く。特定の意味は無いそうだが、日本語で言う「〜ねっ」って言う意味らしい。この語尾活用はその他数種類あって、

"OKラッ!"〜ね。....同意を求める。
"OKマッ!"〜かな?....疑問文。
"OKロッ!"〜だけど。....同意はするが、不本意である。しぶしぶ。
"OKメッ!"〜だよね。....相手の意思を確認する。
"OKワッ!"〜じゃない!!....いいじゃないの、何が悪いの。細かい事言うなよ。

これが会話中に突然入ってくると、わけが分からなくなってきて、「OKラ」という新しい単語かと勘違いする。しかし、特にラを使いこなすことで、あちらの人も「あなた、シングリッシュいけるじゃん」という感じになる。ちょうど不慣れな外国人が関西弁をしゃべるとウケルのと同じ。
ホントに細かないろんなことに、感動したり楽しんだり憤慨したり話のネタは尽きません。

| product | 2005年2月5日(土)

手間がかかっても許してしまう。

text_Ken Ono

冬になると喉が痛くなりやすくついでに風邪っぽくなる。乾燥注意報が出ていても梅雨のようなジメジメと湿度の高い気候よりはいいだろうとあまり気に留めていなかった。しかし、この乾燥とやらが曲者みたいで、今年から温度湿度計をチェックしながら湿度調整を試みてみた。すると喉のほうはすこぶる調子よく、どうやら風邪まで発展しそうもない。
さて、その湿度調整の秘密兵器なんですが、なんのひねりもなく言わずと知れた加湿器。今までは機能優先で加湿してますというのがありありとしていて導入することに二の足を踏んでいた。そしてようやく出会ったのが、プラスマイナスゼロの加湿器。玩具メーカーのタカラとプロダクトデザイナーの深澤直人が組み合わさることで生まれた生活家電。最先端の尖ったデザインというよりは記憶の片隅にある懐かしさのようなものをつっついてくる。水滴のようなフォルムから水蒸気が上がってくる仕草がとても自然な気がしてなんだかホッとする。しかも加湿する喜びすら感じる。
ただ、この加湿器にもひとつ問題点が....いやむしろ、より愛着のわくポイントがある。それは給水作業時に必ず水がこぼれるというところ。ショップスタッフも丁寧にそのことを説明してくれるぐらい確実にこぼれる。だから必ずタオル片手に作業を行う。こぼれた水だけにとどまらず、ついでに本体全体を拭いてしまう。こうなると自然に愛着もわいてくるし、普通の家電なら許されない手間も楽しめる。
手間をかけることを許してしまうデザインは確かに優れたデザインと言える。さらに、あえて手間をかけさせるデザインは生活の本質を喚起してくれるこれから大切な方向性なのかもしれない。