2011年2月27日(日)
そうじゃ吉備路マラソン2011
- ハーフマラソン男子B組の部
- 記録 2時間09分44秒
日常の走るの延長線上にあるマラソンは... 厳しかった。
これまで走り美として参加してきたマラソン大会はすべて蒜山マラソンのもの。今回はじめて蒜山高原を飛び出し挑戦したのが、この吉備路マラソン。飛び出したと言ったものの倉敷からだと断然近い総社の吉備路はもう地元と呼べるほどである。だからと言って地の利があるわけでもなく、はじめてのコースにむしろ緊張すら感じていた。さらには初めての冬のマラソンということもあってはじめてづくしのハーフマラソン挑戦と相成った。
当日、会場に到着してみるととてもマラソン大会然としていることにまず驚いた。整備された会場に溢れんばかりの人ひと。蒜山マラソンではどこかアットホームなイメージを持っていたがあらためてその印象を強くした。
スタートラインに着き、自らの走る力を推し量り、何分台に属してスタートを切るべきか考えていた。とはいえスタートラインに到着したのはギリギリタイム。このギリギリタイムにはひとつの挑戦を込めていた。できるだけ静かに心穏やかにスタートを迎えるというもの。走り出すと否応無しに心穏やかではいられない。心のビッグバンで走りを加速できたらと考えた。
2時間前後のタイムで走るグループに属することにした。それより速いと速過ぎて自らのペースを保てない。また遅過ぎるとペースをつくるのに時間がかかる。
スタート。はじめてのコース、はじめての冬のマラソンがスタートした。このスタートが、ハーフマラソン全21キロのすべてを左右する。心のビッグバンが全身に伝わり、一気に力が手足から放たれた。
これまで自分でも感じたことのないモーレツなスタート。周りのランナーもモーレツなスピード。後半伸びるタイプではないと自認しているので前半でどれだけ前に進められるかがポイントだと思っていた。
ここでひとつの挑戦は大きな失敗へと変わった。吉備路ハーフマラソンのコース序盤には長くて勾配の強い坂が待ち受けている。モーレツなスタートの勢いそのままに坂に入り、もう止まらない。この勢いで一気にこの大きな坂を駆け抜けたかった。だから強く上り、下りも力強く駆け下りた、それはもう力強く。この坂を終えれば残りの走りにも弾みがついて見たこともないモーレツな結果が得られるのではと心躍らせていた。
しかし、平地に戻ったとき大きく広がった横隔膜を平常時の走りの状態に落ち着かせるまでには多くの時間を費やすこととなった。多くのランナー、多くのカメラマンのシャッターポイントである吉備路備中国分寺の五重塔に差し掛かっても呼吸はひとりいまだ荒くとてもカメラに顔を向けられたものではなかった。横隔膜が開き切り、それに伴い腕・肩も上方に押しあげられ浮き足だっている。とにかく重心を低く抑えてペースを取り戻さなければ。
ようやく落ち着いた頃に、またもや上り坂がやってきた。この坂を終えれば、続くはただひたすら平地のコースのはず。呼吸を整え重心を低く抑え、これまで培ってきた 走り美 の真のチカラを発揮できることを期待していた。
ところが2つの坂を走り終えた頃にはもうその力が残されていなかった。ハーフマラソンのそのまた半分も到達していない時点でのことだ。左ヒザ付近の筋肉に強い張りを感じるし、足も思うように前に出ない。チカラを発揮するどころかこのままではゴールに到着することもままならない。
左足に不安を抱えながらこの張りは一時的なものなのか、それとも違うのか様子を伺いながらハーフマラソンのハーフ地点をなんとか通過した。どうも張りは治まる様子はない。ここから何度か訪れる給水地点では何度も足を止めることになった。むしろ給水地点がくることを喜んでいたし、走る から 歩く また 止まる ことを望んでいた。
2つの坂で今大会のテーマとしていた「日常の走るの延長線上にあるマラソン」は無残にもその目的を果たせなくなったのである。日常の走るの量がまず不足していたのだろうか。坂に対する足力、また足のバネが十分に備わっていなかったのか。
はじめてハーフマラソンに挑戦したときのことを思い出す。残り5キロ地点で完全に足が止まり、その走りはすでに歩くのスピードを下回っていた。むしろ歩くのほうが走り美としてその姿を保てていたかもしれない。
給水所で停まっては足の状態を確認し、水を飲みスポーツ飲料を探し、チョコレートなんてたまに嗜みながらまた走り出す。数え切れないほどのランナーが前を追い越していく。もう後ろには誰もいないかもと何度も振り返る。
折り返し地点を越えてゴールまでがこれほど遠く感じたことはない。前に足が出ないのである。前に進んでいる気がしなかった。走り美たらんと足を上げようとするとその度に足に張りと刺激が走る。残り1キロの案内表示と体感1キロの差は途方もなかった。
ゴール付近には応援に来てくれたワイフ、友人がいる。最後の力を振り絞りそこだけがんばった。折り返し地点からの自分を振り返るとそれはもう虚飾の走り美であることはわかっていたががんばった。
ゴール。素直にゴールできたことが、辿り着けたことが嬉しかった。ワイフたちはスタート時あまりの出だしの良さに自己ベスト更新かと期待したらしく、僕もそれらしいことをほのめかしていたこともあってずいぶん早くからゴールの瞬間を長いこと待ち侘びていた。
結果として2時間を少し越える記録は決して悪いものではなかった。ゴールまでのプロセスを考えるとむしろ大金星といえる結果である。今回挑戦した多くの試みは、結果にはつながらずむしろ走りに苦難をもたらすこととなったが、どんな状態でもゴールに向かい走り続けることができるという自信になったと思う。またひとつ走り美は、吉備路マラソン参加によって進化したといえる。
最後に、ともにハーフマラソンに参加したシェフ、ファミリーマラソン参加の親戚家族、応援に来てくれたワイフ、友人... お疲れさまでした。そして、ありがとう。走り美はまた走っていきます。